ビザ専門行政書士の選び方
1.ビザ専門行政書士事務所の選び方
制度上、就労ビザ、配偶者ビザ、経営管理ビザ等の申請は自分で申請することが可能です。
しかしながら、現実は、多くの方がビザ申請のサポートを行政書士に依頼します。
それはなぜなのでしょうか。
日本人でも多くの方々が市役所等の役所で手続きをするのは嫌だといいます。外国人であれば、なおさら大変です。
役所、それも入国管理局という慣れない(恐ろしい?)役所にいろいろな書類を出し、調査されることを想像するだけで、行きたくなくなります。
また、入国管理局は平日の昼間しか開いていません。
普通のサラリーマンや自営業をしている外国人は仕事を抱えて入国管理局に何度も足を運ぶことは困難なことでしょう。
その上、入国管理局に呼び出されることもあります。その場合、予想もしていなかったことにつき問い詰められ、何をどうしたらいいのか分からなくなってきます。
また、入管にビザの申請後、追加資料を要求され、言われたとおりのものを出して不許可になることも多いです。なぜ?と思うかもしれませんが、これは、素人は入管法を知りませんから、入管の審査官が何を疑問に思って追加資料提出を求めたのかわからずに対応しているからです。それで、お金を払って行政書士に依頼するほうが楽だという結論に達し、結局、行政書士に依頼するところに落ち着くわけです。
行政書士に依頼するにはまず、入管申請業務(ビザ申請業務)を扱っている行政書士を探す必要がありますが、 インターネットで検索するとたくさんの行政書士がホームページを作り、ビザ申請業務のアピールをしています。
私たちもその行政書士事務所のひとつです。
では、行政書士に依頼してスムーズに運ぶかどうかの明暗はどこにあるのかを考えてみましょう。
最も重要なのは、やはり第一印象です。
依頼する側に立って考えれば、次のような点が重要になってくるかと思います。
①行政書士は親身になってくれそうか、②過去の経験は豊富か、③すぐ連絡が取れるか、そして④ビザ申請の料金はいくらか、等です。
2.ビザ専門行政書士事務所を選ぶ際のポイント
ビザ申請の専門家である行政書士に、ビザ申請を依頼しようと思った時、どの行政書士がよいのだろうか、どの専門家に相談や依頼をしたら良いのか、実際、判断に困るのではないでしょうか。
そこで、以下、失敗しない行政書士事務所の選び方のお話をします。
①ビザ申請の費用は適正であるか
ビザ申請の費用は、行政書士事務所によって大きく異なります。
ビザ申請費用が安い事務所もあれば、ビザ申請費用が高い事務所もあります。
合見積もりを取られたお客様の見積もり書を見せていただいたら、ビザ申請費用が、A事務所では10万円、B事務所では30万円、3倍も違うケースがありました。
これだけ費用に大きな差がある場合、両事務所のサービスは同じものではないと考えるべきです。
ただ、どんなものでも安いものには裏がありますので、安い事務所を選んだほうがいい、ということにはなりません。
ビザ申請の業務が安い事務所は大きく2つのパターンがあります。
一つ目は、経験の浅い行政書士本人が業務経験をつむため、安い値段に設定して集客を容易にしているパターンです。他業務の記載がたくさんあり、WEBサイトの隅っこのほうにビザ申請の記載をちょこっとしている事務所はほとんどがこのパターンです。
2つ目は、大規模な事務所に多く見られるのですが、若者を安い賃金で採用し、広告費を投入して、大量に集客するパターンです。WEBサイトを見ると、しっかり作りこんであり、信頼できるように見えるのですが、何分担当者の経験が浅く、また多くの場合、後述のように分業体制をとらざるを得なくなります。
②ビザ申請やそれ以外の知識や経験値が豊富であるか?
ビザ申請業務は、裁判や医療における手術に似たような性質を持ちます。この業務は「誰がやっても同じ」ではありません。依頼する行政書士事務所の持つ「知識」と「経験値」によって結果が大きく異なることがあります。
ビザ申請を依頼するお客様が、C事務所に依頼した場合とD事務所に依頼した場合では、同じ結果にならないことがあります。
例えば、単純に「配偶者ビザ申請の申請者が住民票どおりの住所に居住していない」場合を想定してみましょう。
C事務所は、住所変更をしていないと配偶者ビザの不許可理由になることを経験上知っていますので、早急に正しい住所に住所変更してから申請しましょう、と提案しました。
D事務所は、そのまま配偶者ビザの申請を行い、入国管理局に言われたら住所変更しましょうと提案しました。
C事務所に依頼した場合、入国管理局のほうでも自主的に正しい住所に移転したので、配偶者ビザ申請は無事許可になりました。
D事務所に依頼した場合、入管の調査で住民票上の住所に住んでいないことが発覚し、その結果偽装結婚でないかとの疑いがかかり、担当官の心証が悪くなり、他のこともいろいろ突っ込まれ、結局不許可になりました。
このようにご依頼される専門家(行政書士)により、大きく結果が変わることがあります。
また、ビザ申請業務を行うにあたっては、税金や社会保険の知識があるかどうかも重要なポイントです。ビザ申請に関する知識はもちろんですが、ビザ申請以外のことに対しても知識や経験値の高い行政書士に依頼することが重要です。
行政書士等の専門家はは医師と同じで国家試験に合格してはいます。
試験に合格したばかりの医師は経験値が低く、知識が乏しいです。ミスも多いでしょう。新人の医師に手術を任せるのは怖いです。
腕の良い医師は、10年、20年と多くの経験を積んでいます。
ビザ申請の専門家も同じです。あなたは、日本に在留できるか、という重要な人生の局面で、新人の研修中の行政書士に命の次に大事なビザ申請を任せられますか?
実務では、
a.ビザ申請を許可されやすくするテクニック
b.入管とトラブルを起こさないようにする説明力
c.書類のミスがないか調べる調査力
その他にも、様々なノウハウが必要ですが、これらは試験範囲ではなく、実務経験を10年以上積まないと見えません。
実務経験をどれだけ多く積んでいるのかがチェックポイントです。
士業の場合、年齢を重ねてから資格を取得したり、開業する方も多いので、知識や経験値を見極めるには、少なくとも100件以上のビザ申請の実務経験が必要と思われます。
ですので、どの程度の件数をこなしているか一度確認してみることが安心でしょう。
ビザ申請は失敗するとリカバリーが難しくなりますので、費用が安いだけで事務所を選ぶと、実務経験の浅い担当者に遭遇する確率が高くなり、大きな損をすることになる可能性があります。
③ビザ申請は大きな事務所より小規模な事務所がよい
ここはよく誤解されがちなのですが、一見、確かビザ化申請業務も、大規模な事務所に任せたほうが安心なような気がします。
ただ、実務の観点からすると、大企業向けの大きな仕事であれば、大きな事務所でないとこなせないケースがありますが、ビザ申請は個人や従業員1000人未満の中小企業からの依頼になります。このように、小さな個人や企業からの仕事であれば、大きな事務所より、小規模な事務所がよいです。
ではなぜ、小規模な事務所がよいのでしょうか。
これは、
知識や経験値が関係することですが、システム上、大きな事務所では、知識や経験値がない人が担当となることがどうしても多くなってしまうからです。
行政書士は、一般的なビジネスと異なり、資格さえあればすぐに独立が可能です。
そのため、知識や経験を積んだ優秀な人は雇われるより自分で行った方が収入が増えるので独立します。
そして、知識や経験のない資格のない人は、独立できないため残ります。
大きな事務所は、優秀な資格者の離職率が高く、能力の低い人が増えていきます。
大きな事務所の経営者は、経営の能力に長けていますが、経営に時間を費やすため、専門知識や経験値は低いです。
そして、若くて知識や経験のない人が担当者になります。ですから、専門知識に乏しく、依頼者が損をするケースがあります。
また、仮に専門知識があっても、大きな事務所では全部を一人の担当者が行うことはまれで、通常は複数のスタッフによる分業体制となります。
そうすると、申請内容がつぎはぎのようなものになり、全体を通して適切なアドバイスを行うことが難しくなるという問題があります。
このような状況は医師も同じです。大病院にはたくさんの医師がいますが、大きな病気しか扱いませんので、一名あたりのオペ数は少なくなります。一方、小さな病院では医師数が限られていますので、少ない人数でたくさんの手術を行わないといけません。
そのため、結果的に医師1名あたりの症例数は多くなり、手術の腕の良い医者が増えやすくなるのです。
これと同じく、小さな行政書士事務所のほうが、行政書士1名あたりの帰化申請の担当件数は多くなりますので、小さくても専門的にビザ申請業務を長くやってきている事務所は、実務経験豊富ですから、難しいケースにも対応可能です。
また、大きな事務所は倒産することがあります。毎月、発生する多額な人件費を支払わなければならない大きな事務所は、借入(借金)が多く、何か間違えると倒産します。
安心できる中小規模の行政書士事務所との付き合いが理想です。
ただ、注意しなければいけないのは、個人からの依頼は小規模が良いのですが、事務員が一人もおらず、1人で行っているような事務所は、電話対応もままならず、その人が病気で対応できなくなることもあります。
ですから、一般に、3~5人前後の事務所ですと、経営者(代表の行政書士)の目が届き、教育・指導がされ良いサービスを行っていることが多いと言えます。
④お客様への対応はよいか?
ぶっきらぼうな専門家
丁寧な専門家
親切な専門家
横柄な専門家
質問に適格に回答してくれない
事務所によって、対応は大きく異なることがあります。
お客様の感想が判断材料の1つになります。
電話で問い合わせをした際、
どのような対応なのかを観察されるとよいでしょう。
⑤他士業と行政書士が連携して業務を行っているか
ビザ申請業務は、ほとんどが行政書士がサポートしています。
しかし、ビザ申請のプロセスの中で、税金や社会保険の手続き等が必要になることもあり、行政書士ができない業務もあります。
税金は税理士、社会保険は社会保険労務士、この2つの資格者です。
税務申告は、税理士ができ、行政書士にはできません。
社会保険の加入手続きは社労士ができ、行政書士にはできません。
全ての必要を効率良く、安価に行うには、他の士業事務所ときちんと連携をとって業務を行っている事務所の方が良いでしょう。
3.まとめ
以上のように、失敗しないビザ申請専門行政書士事務所の選び方は、5つのポイントが大事です。
1『ビザ申請費用は適正であるか』
2『ビザ申請業務以外の知識や経験値が豊富であるか』
3『大きな事務所より小規模な事務所がよい』
4『お客様への対応はよいか』
5『他士業と連携して業務を行っているか』
これらに着眼し、ビザ専門の行政書士事務所を選ばれれば、良い事務所とめぐり合える可能性が高いと思います。
ビザ申請は失敗すると人生が変わってしまう一生に一度の大事業ですので、専門家選びはくれぐれも慎重に行うようにしてください。
実際、ビザ申請を行う場合、多くの方が自分で申請を行うか、行政書士などの専門家に依頼するかで悩まれることと思います。これは申請しようとするビザの内容や状況などによって異なるので、明確にどちらが正解とは言い切れません。
ただし、見る限り、一般の方が本人申請している場合、難しいケースを簡単に考えていたり、逆に些細なことをものすごく気にしているケースがかなり多いです。
実際に行政書士が行う場合と本人申請の最も大きな違いは、ビザ申請に関する経験の違いです。一般の方であれば多くてもビザ申請を行うのは一生に数回なのに対し、事務所にもよりますが行政書士はその数十倍から数百倍の件数を毎年申請しています。当然、仕事として多くの経験を持つ行政書士の方が、申請のコツや入管の考え方などを熟知しているため、ビザが許可となる可能性は高まります。
また、事務所のサービス内容にもよりますが、行政書士であれば申請中にトラブルが発生した場合や不許可となってしまった場合でもしっかりと対応してくれるはずです。
ですから、少なくとも金銭的に余裕がある場合は、ビザ専門の行政書士に依頼するほうが確実に手続きはスムーズにいくはずですので、ちょっとでも気になることがあれば、まずは相談してみることが重要です。
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