「爆買い」闇ガイドが不法就労で摘発、退去強制処分に
Q.先日、中国人の「爆買い」につけ込む「闇ガイド」が摘発されたそうです。具体的にはどういう点が問題となったのでしょうか?
A.まず、事実の概要は概ね以下のような感じです。
いわゆる爆買いのために来日した外国人観光客らを、資格がないにもかかわらず福岡市の免税店に案内し、報酬を得ていたとして、中国籍の女が逮捕された。
逮捕された中国人の女は就労資格も持たないのに、いわゆる爆買いのために来日した中国人観光客らを免税店に案内し、報酬を得ていたとして、先月、罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分となりました。
女は通訳などのボランティア名目でガイドをしていたということですが、口座には免税店からおよそ3000万円が入金されていたということです。
参照:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160303-00000052-jnn-soci
このような違法ガイドの横行は、何年も前から苦情が多くあり、入管業務を多く行っているものなら誰でも耳にしたことはあるケースで、正直、「今頃やっと取締りか。。。。。」という感じではあります。
上記の行為には、大きく2つの問題があります。
1.通訳案内士の資格を持っていないのに有償でガイドを行っている
まず、有償で(業として)観光ガイドをするには、「通訳案内士」の資格が必要です。通訳案内士試験の概要は下記の試験概要をご覧ください。
http://www.jnto.go.jp/jpn/interpreter_guide_exams/
この「有償で(業として)」というのは、給与や外注の報酬として行われている場合に限定されませんので、反復継続的に免税店からのキックバックをもらっている場合も当然に含まれます。
そして、この「通訳案内士」の資格がないのに有償で観光ガイドを行った場合、通訳案内士法の違反になり、「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」になります(通訳案内士法40条3項、同法36条)。
2.就労資格を持たないのに日本で就労し、報酬を得た
報道からは、この中国人女性がどんな在留資格で日本に在留していたかは明らかにされていません。
ただ、免税店に毎回毎回たくさんの顧客を紹介していた、ということは、恐らく中国と日本を行ったりきたりしていたでしょうから、「短期滞在」の在留資格ではないかと思われます。
「短期滞在」はいわゆる旅行などの目的で90日以内で認められる在留資格なのですが、就労できる資格ではないので、働くと許可なく資格外活動をしたとして、「不法就労」になります。
不法就労の罰則ですが、今回は「報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者」(入管法70条1項4号)に該当するケースとして、「三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科」が検討されたと思われます。
結果、50万円の罰金(刑事罰)が課され、 資格外活動の許可を得ずに「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者」(入管法24条1項4号イ)であるとして、退去強制事由にも該当するとして、退去強制処分になったようです。
ここで、3000万円もの報酬を得て、50万円の罰金で済んだらぼろ儲けではないか、と思うかもしれません。
確かに金額だけを見れば、そういう面は少なくありません。
しかしながら、このような外国人にとって痛いのは、むしろ「退去強制処分」のほうです。
一旦退去強制処分になると、一部特殊なケースを除き、「最低5年」は日本に入国できなくなります。
そして「最低で5年」ですから、もちろんそれ以上の期間入国できないことも十分に考えられます。
ですから、もはやこの中国人女性の日本でのこのビジネスは廃業と相成ることは間違いありません。
どこの国でもそうですが、「就労できない在留資格」で就労すると、非常に厳しい刑罰が待っています。
自業自得といえばそれまでですが、入管法をしっかり守らないと、人生が変わってしまうことが良くわかるケースの一つかと思います。